研究概要

 

物質生産 < バルクケミカル生産(バイオマスへの原料転換)>

 

バイオリピッドプラットフォームの構築

 

「バイオリピッドプラットフォームの構築」を目指して

 

我々の身の回りで利用されている化成品、特にナイロンやポリマー製品のほとんどは石油に由来する化合物を原料とする疎水性の高還元化合物です。

我々は循環型社会への貢献を目指して、余剰バイオマスの中でも非可食性バイオマスを利用して化成品(ポリマー)の原料と成るモノマーの生産を目指しています。

そこでは、糖などの親水性の高酸化物質をポリマー原料(モノマー)などの疎水性の高還元物質へ変換する技術の構築が重要です。

我々はその方法論の一つとして、糖をいったん疎水性高還元化合物である脂質(リピッド)へと効率よく変換する発酵技術、ならびに、発酵生産した油脂を多様な疎水性分子種へと変換する微生物変換技術の開発に取り組んでいます(バイオリピッドプラットフォームの構築)。


 

バイオマスを利用した化成品生産の試み

 

バイオマスから得られる糖類はその構造式からわかるように非常に酸化度の高い物質です。


一方、ポリマーやその原料となるモノマーは還元度の高い物質であるといえます。


我々は、様々な生物がもつ物質変換能力を活用して、酸化度の高い糖から還元度の高いモノマーへの変換を目指しています。


 

バイオリピッドプラットフォーム構築へのスキーム

 

バイオマスを利用した物質生産(バイオリファイナリー)の例として、糖、アルコール、有機酸、アミノ酸が挙げられます。これらは全て高酸化化合物です。


これに対し我々は、バイオマスを利用して比較的還元度の高い脂質、すなわち長鎖脂肪酸の生産に取り組んでいます。


一方、上述のバイオリファイナリー技術と石油に依存したモノマー、ポリマー変換を行う化学工業との間には大きな溝が存在します。


そこで、その溝を克服するために長鎖脂肪酸を生物変換(Biotransformation)によりモノマー原料へと変換する技術の開発に取り組んでいます。

ここでいうモノマー原料とは、反応性の高い官能基を有する脂肪酸であり、水酸化脂肪酸、ジカルボン酸、アミン脂肪酸などが想定されます。


 

脂肪酸に由来するバルクケミカルの微生物生産

 

我々は、様々な微生物から多種多様な脂肪酸変換酵素の取得に成功しています。

これらの脂肪酸変換酵素を活用する事により、安価に入手容易な脂肪酸から、産業上有用な脂肪酸や、生理機能を有すると考えられている脂肪酸、天然には希少な脂肪酸などへと効率的に変換する事が出来るようになってきました。

 

右の図に示している化合物は、我々が取得した酵素を用いることにより生産可能な脂肪酸の一例です。


水酸化脂肪酸、オキソ脂肪酸、部分飽和脂肪酸、共役脂肪酸などが生産可能となっています。


引き続き、新たな脂肪酸変換酵素の探索をすることにより生産可能な脂肪酸種を増やすとともに、実用レベルでの生産を視野に入れた研究を目指しています。

 

ページトップへの移動ボタン



研究概要の目次へ戻る