研究概要
物質生産 < ファインケミカル生産 >
酵素変換・微生物変換プロセスの開発
バイオプロセスに対する国際的評価と期待
微生物機能を利用する物質生産プロセスが、 実際に環境調和・省エネルギーを達成することが確かめられております。
既存の化学プロセスが微生物プロセスに置き換えられた例として、パントテン酸生産プロセス、アクリルアミドプロセスが挙げられます。
いずれの場合も、CO2排出量換算で30%の省エネルギー化を達成しています。
この成果は海外のシンクタンクであるStanford Research Institute、OECD、White Houseなどにおいて大きな反響を呼んでおり、 クリントン米国元大統領によるグリーンケミストリー政策の下敷きとなりました。
先進的なバイオプロセスに向けて
これまでは加水分解・水和などの単純な反応のみがバイオプロセスへの置き換えを検討されて来ました。 将来的なバイオプロセスの産業利用範囲の拡大を見据えて、 より多彩な酵素反応を効率的に実施できるバイオプロセスの開発が求められています。

ここでは光学活性アルコール生産に利用可能な多彩な酵素反応の例を挙げています。
原料やコストに応じた最適なバイオプロセス開発が求められますが、 各酵素反応において要求されるエネルギーや還元力を上手く供給する事が鍵となります。
我々の研究室では微生物の代謝改変法や複合的酵素触媒系の利用により、 様々な実用的バイオプロセスの基盤技術の構築に成功しています。
アミノ酸水酸化酵素を例にした酵素触媒の多様化への試み
基盤技術が完成したバイオプロセスに対して多様な酵素触媒を適用することで、 様々な有用物質の生産が可能となります。
ここではアミノ酸水酸化酵素の多様化の例を挙げています。

微生物スクリーニングにより単離されたBacillus thuringiensis 2e2株よりL-イソロイシン水酸化酵素(IDO)を見出しています。 IDOのアミノ酸配列を基にしたゲノムデータベース検索を実施することで、数多くの新規アミノ酸水酸化酵素を取得出来ました。
これらの新規アミノ酸水酸化酵素を酵素触媒を利用することで、様々な有用アミノ酸を光学純度よく生産することができます。
例えば(2S,3R,4S)-4-ヒドロキシイソロイシンは経口摂取でグルコース依存的なインシュリン放出活性を示すことが知られており、 糖尿病改善効果が期待されているアミノ酸です。 また3位に水酸基を持つアミノ酸はペプチドなどの天然物に最も多く含まれる種類の水酸化アミノ酸であり、 またβ-ラクタムを始めとする医薬品骨格の前駆体としても用いられる重要な化合物です。
我々の研究室ではこのように微生物資源やゲノムデータベース探索により新たな酵素触媒を取得し、 さらにタンパク質立体構造情報を基にした進化分子工学的な手法も取り入れることで新たな酵素触媒を創出することで、 人類に有用な化合物を生産できるバイオプロセスの構築を目指しています。
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